脂肪族カルボン酸と酸無水物

【カルボン酸】

分子中にカルボキシ基〔 COOH 〕を持つ化合物を〔 カルボン酸 〕という。同じ炭素数で同じ骨格の第一級アルコールを酸化して得られる〔 アルデヒド 〕をさらに酸化することによって得られる。

分子中に含まれるカルボキシ基の数により,1価(モノカルボン酸),2価(ジカルボン酸)という。また,RCOOHRが炭素鎖のみのカルボン酸を脂肪族カルボン酸,ベンゼン環を含むカルボン酸を芳香族カルボン酸とよぶ。

カルボン酸の名称は炭素数の等しいアルカン名に「酸」をつける。メタン酸,エタン酸など。ただし,慣用名を用いるのが一般的である。

 
 

ギ酸と酢酸

ギ酸の場合アルデヒド基(-CHO)とカルボキシ基(-COOH)の両方を持つ。そのため,ギ酸には〔 還元 〕性がある。(銀鏡反応は示すが,フェーリング反応は示さない)酢酸CH3-COOHは刺激臭のある無色の液体で,食酢中に約4%含まれている。純粋な酢酸は,冬季は凝固するので,〔 氷酢酸 〕とよばれる

 

無水酢酸

無水酢酸〔 (CH3CO)2O 〕は,適当な脱水剤を用いて,酢酸2分子より水1分子をとると得られる。このようにカルボキシ基2個から水1分子が取れたものをカルボン酸無水物または単に〔 酸無水物 〕という。

 
 

マレイン酸とフマル酸

マレイン酸とフマル酸は互いに幾何異性体の関係にあり,C2H2(COOH)2の示性式で表せる。マレイン酸,フマル酸のようにカルボキシ基を2つもったカルボン酸をジカルボン酸という。マレイン酸は2つの-COOHが同じ方向なので,2つの-COOHから脱水して無水マレイン酸ができる。フマル酸は2つの-COOHが離れており,脱水はできないので無水フマル酸は存在しない。

 
 

アジピン酸

アジピン酸〔 HOOC(CH2)4COOH 〕は分子中にカルボキシ基を2個もつジカルボン酸である。ヘキサメチレンジアミン〔 H2N(CH2)6NH2 〕と特定の条件下で反応して分子量の大きい〔 ナイロン66 〕を生じる。このように,分子間から水のような簡単な分子がとれて結合する反応を〔 縮合 〕という。また,縮合によって分子量の大きな化合物ができることを〔 縮合重合 〕という。また,ナイロン66分子中の-CO-NH-の結合を〔 アミド結合 〕という。

 
 

乳酸

分子中にカルボキシ基とヒドロキシ基の両方を持つカルボン酸をヒドロキシ酸という。乳酸は1つの炭素原子(図の*をつけた炭素原子)にメチル基・カルボキシ基・ヒドロキシ基・水素原子が結合している。このように,結合する4つの原子や原子団がすべて異なる炭素原子を〔 不斉炭原子 〕という。不斉炭素原子をもつ化合物は不斉炭素原子を中心に正四面体構造をしており,分子内にいかなる対称要素も存在せず,どんな手段を用いても重ね合わせることができない2つの異性体が存在する。この両者は,化学的性質,物理的性質はほとんど同じであるが,光に対する性質が異なり(旋光性が異なる),互いに〔 光学異性体 〕または鏡像異性体という。