理想気体と実在気体

これまで扱ってきた気体は,どんな条件(温度,圧力)でも気体として考え,ボイル・シャルルの法則や状態方程式に完全に従う仮想的な気体で,これを理想気体という。これに対して,実際に存在する気体を実在気体という。気体を理想気体として考えるためには次の2つが条件となる。

 

条件1 理想気体では分子自身の体積(分子の大きさ)を0としている

 理想気体:高圧にすると,気体の体積(気体が存在する空間)は0に近づく。

 実在気体:高圧にしても気体の体積が0になることはない。

 
条件2 理想気体では分子間力がないとしている

  理想気体:高圧・低温にしても凝縮が起こらない。

  実在気体:高圧・低温にすると凝縮が起こる。                 

 

☆ 実在気体は低圧,高温で理想気体に近づく

 
 


実在気体の理想気体からのずれ

気体分子1molの圧力pを横軸に,pV/RTを縦軸にとる。理想気体は,pV=nRTが成り立つので,n=1molのとき,n=pV/RT=1になる。

 二酸化炭素は,分子量が大きいので分子間力が大きくなり,圧力を高くすると,やがて凝縮が起こり,気体が減るので体積Vが急激に減少する(pV/RTが小さくなる)。さらに高圧にすると,分子自身の体積(分子の大きさ)の影響が大きくなり,体積Vが小さくなりにくくなる(pV/RTが大きくなる)。そのため,グラフは下がってから上昇する。  
 

水素は分子量が小さいので分子間力が小さく,圧力を高くしても凝縮は起こらず,分子自身の体積(分子の大きさ)の影響より,初めからpV/RTが大きくなる。

例題

次の文を読み,下の問いに答えよ。必要があれば次の数値を用いること。気体定数R=8.31×103PaL/Kmol〕,原子量H=1.0He=4.0C=12O=16

 右の図にはabcという3種類の気体におけるpV/Tpの関係が示してある。ここでpは圧力,Vは体積,Tは絶対温度である。また,3種類の気体の物質量はすべて同じである。 
 
1 aの気体において,圧力を上げていくと,縦軸の数値ははじめ減少したが,さらに高い圧力では逆に増加した。これは,
 はじめは( 1 )の影響が大きいために( 2 )の減少が大きくなり縦軸の値が小さくなる。圧力を上げていくと,分子の
 ( 3 )の影響で( 2 )の減少が小さくなるので,縦軸の値が大きくなる。


2 abcがすべて同じ物質であり,その温度だけが異なる場合,最も温度が高いのはどれか。

3 3種類の気体がメタン,ヘリウム,二酸化炭素である場合,abcはそれぞれどれに相当するか。ただし,すべての
 気体は同じ温度であるものとする。


4 これらの気体と同じ物質量の理想気体では縦軸の数値が1.25×104であった。これらの気体の物質量はどれだけか。有
 効数字3桁で答えよ。

 

1 (1) 分子間力  (2) 体積  (3) 大きさ(体積)  問2 c(高温ほど理想気体に近づくから)

3 a CO2  b CH4  c He 分子量が大きいほど分子間力が大きくなり,理想気体からずれる。

4 1.50mol (pVnRTより,npVRT1.25(8.3×103)1.5041.50mol〕)